第四話



「到着・・・・・・ノレン?」

俺は目的地がもうすぐそこ、という所まで来てそろそろノレンに降りて貰おうと声をかけた。
だが返事が返ってこない。

俺は不思議に思い、首を反らしてノレンを見た。
「ノレ・・・・・」


思わず俺は笑ってしまった。
ノレンは幸せそうに俺の背で寝ていたのだ。

「口開けっ放し・・・涎垂れてねぇだろうな・・・」
そんな事呟きながらノレンを下へ降ろす。
いつまでも背負ったままではさすがに疲れる。

俺は肩を解しながらそろそろノレンを起こさなければと声をかけた。

「ノレン。そろそろ起き・・・。・・・?」

気のせいだろうか?ノレンが何かぼそぼそと寝言を言っているように聞こえる。


「おいおい寝言言ってんじゃねぇよ。さっさと起・・・」



その時はっきりと、今までは聞こえるか聞こえないかぐらいの音量であったのに、
今度ははっきりと、泣きそうな声でノレンが・・・・・


「お母さん・・・お父さん・・・・・・」


と呟いた。

「・・・・・・ノレン・・・」
俺はぱっとノレンから顔を逸らした。

ノレンは小さい頃、突然親から捨てられた、というより、親が行方不明になった。
ノレンは3人姉弟だったらしく、その内ノレンと双子であった弟は、
親が行方不明になった直後、何処かへ行方を眩ましたらしい。
それからは歳が少し離れていた姉が育ててくれていたそうだ

まぁ、ノレンも思う所があったんだろう。
ある日何処で俺の事を嗅ぎ付けたか知らんが、
急に俺の所に来て、弟子にしろと言ってきた。

何故盗賊になるのかと聞くとあいつは
「親を捜すため」
と答えた。

何故か俺はあいつにこれまで弟子にしてくれと来た奴とは何か違う気がした。
だから気まぐれで弟子にした。

でも本当は・・・・・・あいつの親が消えた日が・・・


そんな事を考えていたらようやくあいつが起きたらしい。

「あ・・・はよーゴザイマス・・・・・・」
恐る恐る俺にかけられるノレンの声。
「随分機嫌よく寝てたじゃねぇか?あ?」
「ごめんなさいー!!!寝るつもりはなかったんだけど!」
「・・・・・・」
「わぁぁぁああ!ほんとにごめんー!」 「・・・・・・行くぞ」

「へ?・・・怒ってない・・・??」
《やった、なんかわかんねぇけどトキ怒ってネェw》

ノレンの心の声が聞こえる。
「あぁ、んな事思ってんなら駄目だな。折角許してやろうと思ってたのにな」

俺がそう言うとノレンは慌てたように弁解を始める。
「すんません〜!ほんと、許して!」

必死ながらも心では本気で俺には謝っていないノレンを見て俺はクス、と笑うと歩き出した。

少しの間俺が歩き始めてからも気付かず謝っていたノレンだが、気付くと 後ろからノレンが「ちょい置いてく事ねぇだろ!」と叫びながら追いかけて来た。



馬鹿な奴・・・・・・。

俺はそう思いながら目的地へと一歩一歩足を進めていく。







この先、何が待ち受けていようとも。

俺は前に進みつづけたい。



そう願いながら。